県東部地区にある、某屋外型テーマパークへ行ってきました。たまたまネットで常設の吹矢コーナーがあること、そしてスポーツ吹矢の用具を使っているらしいことを知り、どんな様子なのか純粋に興味が湧いたためです。
折しもお盆休みの真っ直中、また天候にも恵まれていたことから、相当に広い駐車場も駐める場所を探すのに一苦労するほど。園内も、家族連れを中心に大変な賑わいとなっていました。
目的の吹矢コーナーは、敷地内でいえば少し外れの位置。パークゴルフっぽいアトラクション(ボールはテニスボールのようでした)の敷地奥にありましたが、丘を登った先ということもあってか、入園口周辺の様子からすれば意外なほど人影はまばらでした。
▼丘を登り切った場所から。目的の吹矢コーナーが広場の奥に小さく見えています
区画の入り口には、施設での名称らしき「健康吹き矢」の看板が設置されており、どこかで聞き覚えのあるような説明が表示されていました。まず「ん?」と思ったのは、5m・7m・10mという中途半端な距離区分。また、「中心は10点」というのも、我々スポーツ吹矢にはないポイントでしょうか。
▼「健康吹き矢」の看板。20発でウォーキング5kmという説明は既に協会では使っていません
この看板を見ながら区画に入ると、今度は「健康吹き矢の正しい吹き方」なる看板が。かなり省略してはいますが、動作の名称といい、細かな文言といい、スポーツ吹矢そのものの説明です。中途半端な筒の持ち方が大変気になりますが、知らない方には違いすら分からないことでしょう。
▼これが正しい吹き方だそうです。スポーツ吹矢の基本動作と(説明としては)瓜二つですね
吹き方の説明看板からもう少し奥に進むと、吹矢コーナー手前に受付の小屋があり、胸に「アルバイト」の表示があるネームプレートを付けた、若い男性スタッフが一人いました。どうやらこの人に申し込むようです。
私「すみません、吹き矢をやりたいのですが」
スタッフ(以下「ス」)「では、この承諾書にご記入ください」
(細かくは覚えていませんが、事故対応等への承諾書に記名させられました)
ス「では、説明します。矢を10本貸し出しますので、この棒で吹きます」
私「はい」
ス「口元にはこのマウスピースを付けてください。どうぞ(自分で付けろ、という指示)」
(試食コーナーのようなケースに体験会用マウスピースが複数置いてあり、これを取って自分で筒に取り付けます)
ス「では、こちらに来てください」
(早速、レーンに案内されます)
ス「あちらが的になります。ここ(テントの真ん中辺り)が7mで、この辺り(前方を提示)が5mです。最初は5mから始めて後ろに下がるといいです」
私「はい」
ス「あの辺(テント後方を示して)が10mですが、軽く飛びますので届くと思います。矢を入れるときは、斜めではなく水平にしながら入れてください」
私「はい」
ス「刺さった矢を抜くときには、的の横に抜く道具がありますので、それを使ってください。手で抜くと折れ曲がったりしますので。では、あとはご自由にお好きなだけ吹いてください」
私「時間制限とかはないんですか?」
ス「ありません」
私「分かりました」
言い回し・順番など記憶違いはあると思いますが、実際に吹くまでのやりとりは概ねこんな感じでした。スタッフが特に見本で吹いてみせるでもなく、承諾書に記入してからほんの数分で「自由に吹き放題」の環境が手に入った格好です。
各レーンは、幅がおよそ1m程度。レーン間にはグリーンネットが張られていて、不用意に隣のレーンへ入ることのないよう配慮がされていました。また、吹く位置には専用のスタンドが用意されており、これはなかなかしっかりとした造りです。
▼的(右下に矢抜きが常備)と、専用のスタンド。しっかりと造られていました
とりあえず、実際に吹いてみます。ここで想定外(?)だったのは、レーン(ネット)の幅が狭すぎて、筒の上げ下ろし動作ができないこと。「正しい吹き方」まで提示しているのに、それができないという矛盾を感じつつ、致し方なく吹く部分だけの実践です。
屋外ということで、風に左右される部分はあるものの、距離が距離だけにまぁ普通に飛んで当たります。的の高さは160cmより幾分低めですが、支障が出るようなものではありません。
しかし、刺さった矢を回収してきてから、はたと気付きました。「クリーナーがない!」そういえば、受付小屋のテーブルの上に紐タイプのクリーナーが一つだけ置いてありましたが、利用者は遊んでいる間、一切のクリーニングをせずに吹かなければならないようです。
▼コーナー全景。先客が4名(グループのようでした)と、私の後に1名が来ていました
そして、何度か吹いている内にもうひとつ気付いた点が。それは、矢が異様に撥ねること。先客のグループの皆さんも同様に撥ねていて、「また撥ねた~」「吹く力が弱いんだよ」「そっか~」といった会話をしていたほどです。
いくらなんでも異常なので、よくよく的を見てみると、的紙の裏紙を剥がさずに(シールで貼られずに)四隅をピンで留めているだけでした。これでは派手に撥ねるはずです。また、この状態だと的の破れ方も大きめになるようで、それが更なる撥ねを誘発している状況。私の場合だと、最大で10本中5本が撥ねていました。
▼貸し出された矢はこんな感じ。使われ方の割には、比較的マトモな状態といえるかもしれません
そんなこんなで5、6回吹いたところで、止めることにしました。風の影響を考慮しながら吹くという若干の面白さはあるものの、筒のクリーニングもできないままで吹き続ける意味はないと判断したからです。
最初のスタッフさんに用具を戻す際、的紙をシールも剥がさずにセッティングしている理由を尋ねたところ、「特に理由はない」とのことでした。当初はきちんと貼っていたものの、ボロボロに破れた的紙を貼り替える手間を考えて、今の形に落ち着いたのかな、とも思いますが...。
また、きちんと指導するような人が定期的に来たりするのか、という問いにも「特にないですね」という答えでした。つまり、(何人交替かは分かりませんが)この「健康吹き矢」コーナーにおいては、特段の技量・知識のないスタッフが「指導・管理」を担当しているということのようです。
スタッフとの会話はその程度で、こちらが協会会員(指導員)であることすら伝えませんでしたが、非常に悲しく複雑な気持ちでコーナーを後にしたのが、正直なところです。
▼テントの印刷といい、的パネルの造りといい、施設側がかなり「本気」で設営したことは分かります
ここまで特に書きませんでしたが、使われている筒も矢も的も的紙も、勿論日本スポーツ吹矢協会の公認用具でした。しかし、コーナーのどこにも「スポーツ吹矢」「日本スポーツ吹矢協会」の文字は見当たりません。点数や距離の説明からも、あくまでこの施設が考案した「健康吹き矢」であるという受け取り方しかできないでしょう。
ただし、施設スタッフが綴っているブログでは、コーナー開設前の3月頃に「(吹矢の)説明を受けた」という記事があり、その際には「スポーツ吹き矢」という名称をしっかり出しています。そもそも公認用具を大量に購入しており、スポーツ吹矢を知らないはずもありませんので、「説明をした人」のアドバイスもしくは自主的な判断で、異なる名称を用いることにしたと考えるのが妥当かもしれません。
カルチャーセンターやスポーツクラブは別として、こうした商業施設でスポーツ吹矢が導入されている例がどの程度あるのか、寡聞にして知りませんが、ここまで「本気」で採用している所はそうそうないのではないかと思います。また、施設の規模や知名度から考えても、年間を通せば相当な来園者が体験されるのは、間違いありません。
となれば、スポーツ吹矢の用具を使い、「正しい吹き方」と称して基本動作そのままの説明を行いながら、「スポーツ吹矢ではない」ものとして運営されているという実態を、協会本部がどの程度把握しているのかが、非常に気になるところです。
ちなみに、今回体験するにあたって、スタッフからは印刷物のひとつも渡されませんでした。勿論、コーナーの一角に吹き方の説明はありますが、レーンから数十メートル離れた場所に設置されているため、分からないときにいちいち確認しに行くのは現実的でありません。結局、それぞれが好きなように吹いて遊んでそれで終わり、というのが実際のところでしょう。
また、スポーツ吹矢との関連性は一切明示されていないため、仮に「吹き矢って面白いね」と感じた方がいらしたとしても、「近所でやってるところはあるのかな」という発想にも至らない、つまりスポーツ吹矢の普及には殆ど影響がないということも、容易に想像がつきます。
施設全体からすれば、あくまで「オマケのアトラクション」程度の位置づけなのだろうとは思いつつ、この中途半端さは非常に「勿体ない」感じです。公認用具を使いながら、スポーツ吹矢の一部分を取り出し、独自の解釈を加えた競技に仕立てているという点では、とある所と共通項を感じずにいられませんが、それは気のせいでしょう、きっと。
商業施設がビジネスとしてやっていることに口を挟むのは難しいことであり、どうこうしろという権限は協会にもないのかもしれません。しかし、「町内のおじさんが吹矢の用具を手に入れ、勝手に近所に教えている」レベルでは決してないのも事実です。もし、協会本部が既に把握し了承した上でのこととしても、あまりに用具の扱いなどがお粗末であり、もう少し連携を密にすべきでは、と個人的には感じました。
あまりにショックを受けたため、非常に辛口のエントリとなりましたが、これだけの規模で吹矢の体験が常にできる場所はなかなかありません。いつまで続けていかれるか分かりませんが、ぜひより良い運営になるよう期待しています。なお、施設側のどなたかがこれを読まれたとしたら、具体名の一切を伏せている時点で、決して営業妨害が目的ではないことをご理解いただければ幸いです。
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