支部を運営する際、多くに共通する難問・課題がいくつかあると思います。その中でも重要なもののひとつは、「的の固定方法」ではないでしょうか。勿論、一番手っ取り早くかつ確実なのは、公認用具の三脚的台を購入することですし、協会としても最も望ましい形には違いありません。しかし、ほぼ唯一にして最大の難点は、「(金額が)高い」こと。収納ケースまで合わせると、支部購入による割引分を差し引いても一台当たり2万円を超え、5セット揃えた場合は10万コースです。これでは簡単に手を出すわけにいきません。
となると、「公認用具以外の工夫」が編み出されるのは必然と言えるでしょう。会場の壁にそのまま虫ピンを刺して固定できれば一番いいのですが、公共施設を使う以上なかなか許されるものではありません。全国各地の支部サイトを覗いてみると、実に様々な方法で的を設置している様子が窺えます。
例えば、パーフェクト福島支部では、水道用の塩ビパイプを利用して台を作っています。この利点は「材料が安価」「加工が比較的簡単」なことでしょう。実は当支部でも見よう見真似で作ってみたことがありますが、確かに安く加工もしやすいものの、一つ難点がありました。パイプの結合部分をゆるくすると分解はしやすい反面グラつきが大きくなり、きつくはめるとグラつきにくいが分解しづらくなってしまうのです。分解しない前提であればガッチリ作ることも出来ますが、少なくとも当支部では車で持ち運ぶため180cm近い全長のままにしておくわけにはいきません。対策として結合部にスクリュー部品を使ってはみましたが、強度的に決して満足のいくものではありませんでした。福島ではどう対処されているのか分かりませんが、量産は躊躇わざるを得ず一台だけの試作で終わったのです。
次に、上州伊勢崎支部や牛久中央支部のように、何らかの三脚(伊勢崎は「四脚」ですね)あるいはスタンドを流用して台にするパターンがあります。これはかなり広く見られ、公認用具かのごとく完成度の高いケースもありますが、三脚部分と的パネル部分、あるいは三脚とパネルまでのポール部分の接合が比較的難しいというネックがあります。三脚とポール、ポールとパネルをそれぞれネジ留めが理想ですが、その筋の技術者もしくは腕に覚えのある仲間が周囲にいない限り、苦労するところ。当支部では試作すら諦めざるを得ませんでした。
続いては、京都宇治支部のような「二つ折りできる長い板を壁に立て掛ける」方式。これの利点は、「板自体は折り畳むとかさばらない」ことと「的の位置調整が不要」であることです。ただし、京都の場合は木枠で補強している(立て看板を折り畳めるようにしたイメージ)ため、少々かさばるように思われます。とはいえ、薄い板だけで作ると強度的に問題が出ることも予想されますので、悩ましいところでしょう。また、壁にピッタリ付けられる会場でなければ使えないという弱点も。
他には、「壁に直接固定式」と「板立て掛け式」の中間として、ある程度大きめの的パネルを壁に固定するケースもあります。磐田支部で見たものですが、これも壁への固定方法がなければ使えず万人向けとは言えません。
とまぁ皆さんのご苦労が偲ばれる中、当支部でも「安価かつ加工が容易」な的台を制作して使っています。それが、これ。
パターンとしては「三脚流用式」に分類されるこの台、ベースとなる三脚にはいわゆる「室内用物干しスタンド」を用いることで、圧倒的な低コストを実現しています。元々は、某先生に教わった方式ですが、当支部ではスタンドを特定することで加工の容易さも併せ持つことに成功したのです。まず、用意するのはカインズホームのプライベートブランドによる「室内物干しスタンド」。
一台980円と非常にリーズナブルです。三脚部分とポール部分は分解できますので、持ち運びにも便利。また、パネル部分にはプラスチック段ボール板(プラ段)を適当な大きさに切り揃え、これをスタンドに固定します。この際、矢崎加工のイレクターパイプ用プラスチックジョイント部品(J-46)を使うと、内径とスタンドパイプの外径が見事に一致し、一切のグラつきが出ません。
当支部では安定性を重視して二つ並べていますが、1個60円程度なので2個でも120円ほど。プラ段もこの大きさの単価はせいぜい200円か300円程度、あとは何組かのネジと的を引っかける金具だけですから、全部で1,500円程度しかかかりません。これなら、5台作っても10,000円でお釣りが出ますので、支部会計にも優しいこと請け合いです。
とはいえ、いいことずくめではありません。制作時の問題としては、スタンドそのものの加工精度が低いため、高さにバラツキが生じることが挙げられます。980円ですし、そうしたセンチ単位の厳密さを求められる商品ではないので仕方ありませんが、最終的には三脚部分・パイプ部分・パネル部分の組み合わせを固める必要があります。的を引っかける金具の位置だけはキッチリ寸法を調整しなければなりませんので、これが手間といえば手間でしょう。
設置時の問題は、台そのものが非常に軽量のため、矢を抜く際にあまり力をかけると位置がずれてしまうこと。当支部では壁際に置くことでずれにくくしてはいますが、壁を保護するためなどである程度離して置かなければならない際には注意が必要です。
また、カインズホームが近くにないとスタンドを入手できない、製造終了となった際に代替品がない、というのも難点といえるでしょうか。実際、作ったのは半年ほど前のため、現時点で現行製品かどうか保証ができません。現在4台持っているので、もう5,6台は作っておきたいのですが...。
と、多少の問題もある的台ではありますが、こちらでは支部員さんからの評判も上々で、何より安上がりなのがありがたいです。もし、主に予算面で的台にお困りの他支部の方がいらっしゃいましたら、一度お試しいただくことをオススメしておきます。
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